
クライアント コモタ株式会社
場所 横浜国際消防・防災展
時期 2022年6月
「誰もが簡単に使うことができる人にやさしいコンピュータ」をめざして。それがコモタを設立した技術者たちの想いでした。
1967年、コモタ技研株式会社発足当時、事務処理作業に追われていた現場のひとつがガソリンスタンドです。自動車はまだ法人利用が多く、掛け売りがメインで、毎月の請求管理業務が経営の大きな負担となっていました。
そこで、コモタは世界発のガソリンスタンド専用コンピュータ「コモタックSS」を開発。これによって事務作業にかかる時間は大幅に削減。誰でも使える「人にやさしいコンピュータ」の記念すべき第一歩となりました。
現在では米国で新しく開発されたMPUをはじめ、さまざまな先端技術を取り込み、小型化、高機能化を高め、ガソリンスタンド経営に役立つコンピュータ・POSを中心に開発・製造を続けていきます。
(コモタ株式会社Websiteより抜粋)
今回、壁画を描かせていただいたのはコンテナ型給油所(地上タンク)。
現在、日本では法律によってガソリンは地下に貯蔵しないといけないということになっています。
しかし近年、ガソリン需要の減少を背景に、過疎化や、それに伴う人手不足等により、
ガソリンスタンドの数が減少し、自家用車、農業機械への給油、さらには移動手段を
持たない高齢者の方々への灯油配送などに支障をきたす地域がSS過疎地として
増えてきており、その地域の方々にとって、燃料供給インフラの維持は、喫急の課題となっています。
そこで、コモタ株式会社は経済産業省 資源エネルギー庁の「平成30年度SS過疎地対策検討支援事業」の下、ヨーロッパでコンテナ型給油所の実績豊富なドイツ企業と共に、日本向けに新たに設計、開発、製造を行い、日本国内適合品の計器類を装備したコンテナ型給油所のプロトタイプとして、技術検証を行いました。
翌年には、10フィートと20フィートの2台のコンテナを設計、開発、製造を行い、同時に安全性を確保するために、さまざまなリスクを想定した安全性のリスクアセスメントを行い、加えて第三者の評価を経て、実際のSS過疎地の売木村(長野県伊那郡)に設置し、売木村の運営スタッフの約1か月間の訓練および試験運用の後、正式に運営開始となりました。
*詳細はこちら
https://www.comota.co.jp/products/products10.html
「横浜国際消防・防災展」に出展
「横浜国際消防・防災展」は、日本とアジアの消防の交流を図り、アジア地域の消防体制の更なる充実を目指した「IFCAA2022 YOKOHAMA」として、「第32回アジア消防長協会(IFCAA)総会」、「第74回全国消防長会総会」、「IFCAA 2022 国際消防救助隊合同訓練」を含む大規模な国際イベントの一つです。
コンテナ型給油所を展示するにあたり、主に二つの課題がありました。
・出展場所が会場の奥であり、かつ消防関係のイベントなので、消防車など、見た目が派手なものが多い中で人の目を引く必要があること。ただし、ベタベタ塗って派手にせずに、あくまでコンテナを引き立たせるデザインであること。
・コンテナ型給油所という、一般に認知されていないものをどうやって知ってもらうか、コミュニケーションのきっかけをつくること。
そこで、コモタの皆さんと協議を重ね、コモタの目指すものである三つの指標(Life, Ecology, Mobility)の頭文字を、シンプルな立体線で繋ぐデザインを提案しました。

Life::多様な人々の人生を、カラフルな色味で表現。

Ecology:芽吹きや植物の蔓が伸びるイメージ。

Mobility:コモタブルーを伴い、正面に大きく描いた。シャッターの開け閉めによって文字の全貌が見えたり見えなかったり可動する点も"Mobility"にかけている。

繋がる文字たち


立体線の意味
遠くから見たときに「なんだあれ?」「近くで見てみよう」と誘う為に、シンプルな線でありながら、立体線にすることでトリックアートのような不思議な効果が生まれます。
?でコミュニケーションを生む
具体的なモチーフや、標語の文字を全て描くのではなく、あえて頭文字だけ描くことで、鑑賞者が「これは何を描いたものですか?」ときいてもらうきっかけづくりとなります。
積極的に営業して声をかけるのではなく、鑑賞者からコミュニケーションをとることで、心を開いた状態で耳を傾けてもらえるのではと狙いました。
抽象画の良さとして、ぱっと見わかりづらいことがむしろ想像力を駆使して自由な解釈を促す点があります。
「?」を通じて人々がコミュニケーションをとること自体がアートと言えます。
実際にイベント当日には多くの方が質問をしてきてくれて、営業の方も初めての感覚だったと言ってくださいました。
アートの役割
単に場を華やかに装飾することだけでなく、人の心を動かすこと、そこに存在することで誰かの力になれること、それがアートの役割ではないかと思います。
ここにみんなで全力で生きた、その証を一緒に残せたことを大変嬉しく思います。
おまけ
壁を描いたあとに少し時間が余ったので、どうせならシャッターを開けたときにもアートを描き込もうと思いました。ちなみにCOMOTAの文字が隠されています。ここでも、「何が隠されて描いてあるかな?」と、コミュニケーションのきっかけになる仕組みは一緒です。


また、今回このプロジェクトを紹介してくれたKAZU TABUさんが応援に駆けつけてくださり、壁画を描いている様子を描いてくれました。


そして、その作品もまた、メイン会場、サテライト会場両方の一番見えるところに掲示してくださりました。自分たちのことを一番売り込まなきゃ!という場所なのにも関わらず、大きなスペースをとってまで紹介してくださり胸が熱くなりました。
「ひとにやさしいコンピューター」をつくるのは、「ひとにやさしいひと」たちだからこそできることなんだろう。





制作期間からイベント当日、そして打ち上げまで、みなさんと楽しく会話しながら、一緒にいられたこの時間を忘れることはきっとないでしょう。
絵を描いてきてよかったと思える素晴らしい現場でした。