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Vanishing Art Project Vol.1

  • 執筆者の写真: Shinjiro Tanaka
    Shinjiro Tanaka
  • 4月3日
  • 読了時間: 2分

クライアント:グリッジ株式会社

場所:船場マンション(原宿)


本作は、「破壊と創造」をテーマに総勢11名のクリエイターが参加した「消えるアート」プロジェクト vol.1の一環として制作された。


取り壊し予定のマンションを舞台に、建物そのものだけでなく、昭和・平成を通して解決されてこなかった価値観や社会構造に対しても問いを投げかけ、それらを壊しながら再構築していく試みであった。SDGsという国際的な枠組みとも接続しながら、アートの力で社会に向き合うプロジェクトである。


その中で、自分は人種問題をテーマとして選んだ。


当時、BLM運動が広がりを見せはじめ、人種間の隔たりを改めて強く感じるタイミングだった。


ニューヨークに約5年間住んでいた中で、自分もアジア人として、心無い言葉や態度を向けられる場面が少なからずあった。それは露骨なものばかりではないが、確実に存在していた。


「Stop Asian Hate」のような運動が可視化される以前、アジア人に対する差別は明確に語られることも少なく、どこか曖昧な場所に置かれていたように思う。存在しているのに、見えていないような感覚だった。


自分の中で強く残っているのは、2013年にニューヨークで起きた日本人留学生の死亡事故だ。目撃者や映像記録があったにも関わらず、大きく取り上げられることはなかった。そのとき、誰の命がどう扱われるのか、強い違和感を覚えた。


そうした感覚や経験が、この壁画には反映されている。


背景にある無数の色は人の多様性を表しているが、その多くは実際の肌の色とは一致しない。人種という枠組み自体への違和感をそこに込めている。


その上に、「黄色」である自分自身をぶちまけた。それは自身の存在であると同時に、外から与えられる単純化されたラベルへの応答でもある。


天使と悪魔は、それぞれ白と黒のアウトラインで描かれているが、こうしたイメージ自体が偏りであるという指摘もあり、本作ではその前提も含めて問いとして扱っている。その内側は透過されており、下にある色がそのまま現れる構造になっている。


白か黒かで語られる世界。


でも、よく見てほしい。世界はそんな単純なものではない。


この作品には、怒りとも悲しみとも言い切れない感情が込められている。それは、人と人との関係性や、それを規定する構造に対する、言葉になりきらない違和感のようなものだ。


そして本作は、建物とともに消えていく。だが、そこに込めた問いや感覚は、簡単には消えない。








 
 
 

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